雲晴夏木の独り言

#人外と人間 で100日かけて100本掌編を書こう企画その13!

Day.13  貘

 眠るミーナの頭の上に、貘がいる。どこぞの誰かの夢を、わざわざミーナの頭の上で食べているようだ。
 このまま貘の重さにうなされるミーナを見るのも面白いが、わたし以外がミーナに触れているのは面白くない。
 わざとらしく咳払いし、わたしは貘に話しかけた。
「そんな場所で彼女の夢ではなく他人の夢を食べるのは、どういう理由からだ?」
 貘はゆるゆると頭をもたげると、こちらを向いた。眠たげな目がわたしを捉える。
「あのねぇ、ここはねぇ、座り心地がいいんだぁ」
「きみにはそうだろうが、ミーナにとってはそうではない。せめてクッションに乗ってやってくれ」
「この子はねぇ、守られてるからねぇ、心地がいいんだぁ」
 答えになっていない。ミーナのうなされる声がわずかに大きくなる。言葉で促しても移動しないなら、力で移動させるまで。
 わたしは指をぱちりと鳴らし、貘の尻尾に火をつけてやった。
 ギャッと声を上げた貘はそのまま姿を消し、その声に驚いたミーナががばりと起き上がった。
「レオっ? 今の声、なぁに?」
「今の声? 何のことだい?」
 とぼけるわたしを疑うこともなく、ミーナは「夢だったのかな……」とまたベッドに潜り込んだ。貘のせいで乱れた髪を直してやりながら、「おやすみ」と微笑みかける。ミーナはもう瞼が上がらないらしい。「おやすみなさい」ともごもご呟いたかと思うと、すぐに寝息を立て始めた。
 健やかな寝顔は、あの頃と何ら変わらない。
 懐かしく愛おしいミーナの寝顔を、わたしは朝が来るまで、飽きることなく見つめていた。伏せる