雲晴夏木の独り言

#人外と人間 で100日かけて100本掌編を書こう企画その! じゅう! よん!

Day.14  水たまり


 雨上がりの道を歩いていたときのこと。道の真ん中に、大きな水たまりができていた。そこには鏡のように綺麗に青空が映り込んでいる。
「水たまりって、空の穴みたいね」
 水たまりを覗き込み笑う私に、レオは真面目な顔で「あまり覗き込むものじゃないよ」と言う。
「気をつけないときみも落ちるよ、ミーナ」
「ほらご覧」とレオが白い手袋をはめた指で示すのは、水たまりのある一点。じっと見ていると、何かがぐんぐん近づいてきた。
「おっと、危ない」
 ちっとも慌てていない声のレオに腕を引かれ、一歩後ずさる。その瞬間、私の鼻先を掠めて何かが飛び出した。それは黒い影となり、そのまま空へ向かって消えていく。
 あのままぶつかっていたら、私の顔に穴が空いたかもしれない。そう思わせるスピードに、心臓がどくどくと早鐘に代わる。
「今の、なに?」
 どうにか声を絞り出した私に、レオはこともなさげに「かつてどこかから落ちたものさ」と答える。
「きみも不用意にどこかから飛び降りたりしないことだ。あんな風に、空に囚われる落ち続けなきゃいけないことがあるからね」
 ゾッとするようなことを、レオは何でもないことのように言う。
 私が「落ちたりしないわ」と返せば、「落ちないだろうね」とレオはうなずく。
「何せわたしが守っているからね」
 そう。そうだ。レオはいつでも私を守ってくれている。それはわかってる。わかってはいるけれど……。
「ねえ、レオ。……怖いから、家に着くまでそのまま私のそばにいて」
「いつもそばにいるけれど……きみが望むなら、姿を現しておくよ」
 水たまりが見えるたび、また何か飛び出してこないかと怖くなってレオの三つ揃いを掴んでしまう。そんな私を、レオはおかしそうに、けれどどこか微笑ましげに見ていた。
伏せる