雲晴夏木の独り言

#人外と人間 で100日かけて100本小説書くぞ頑張るぞの27日目!

Day.27 視線


 祖母の遺品に、古びた鏡があった。額縁の彫刻はどこか異国風で、鏡面はわずかに曇っている。けれど不思議と、私の顔映りはよかった。
身だしなみを整えるため覗くと、私の隣にレオが立っているのが見えた。
「レオ、レディが朝の準備をしているときは覗き見しないで」
「いや、すまない。きみの髪が見る間に整うところは、魔法みたいだと思ってね」
 真顔で褒めるものだから、文句を言う気も失せてしまう。
 私はため息をつき、「じゃあ、ちゃんと見てて」と鏡越しにレオに語りかける。だって、褒められて悪い気はしないでしょう?
 私は「ここはこうして」「これはこう使って」とレオに身だしなみのレクチャーをした。私が手を動かすたびに、レオはまるで授業を受ける生徒のようにうなずく。……これじゃあ私、この先寝癖一つ放置できなくなりそう!

 祖父の遺品に山ほどの本がある。祖父の本棚から本を抜き取り、自室で読んでいるとき、ふと視線を感じた。顔を上げるともちろん、レオがいる。
「なぁに、レオ?」
「いや、すまない。きみの真剣な顔が美しいから、つい見蕩れてしまってね」
 そう言いながら、レオは悪びれる様子もなく優雅に椅子に腰掛けた。レオの優雅さに反し、私の頬はじわじわと熱くなる。
 まったくもう、そんなふうに言われたら顔を上げられないわ!

 私の部屋は南向きで、太陽も月もよく見える。ある夜、窓の外から視線を感じる。窓の外を見上げてみると、月に腰掛けたレオが私を見下ろしていた。
「いや、すまない。きみの寝顔があまりに可愛らしいから、夜通し見ていようと思ってね」
 冗談とも本気ともつかない口調に、私はシーツを頭から被って寝るほかなかった。

「ねえ、レオ」
「何だい、ミーナ」
 自室で勉強中、視線を感じて振り向く。案の定、レオは私を見ている。
「そんなに熱い視線を送られたら、私いつか、燃えちゃうわ」
「愛しのミーナが火に巻かれるなんて、わたしがいる限りありえないさ」
「はいはい、わかったわ」
 何でもないように流して勉強に集中するふりをしたのはいいけれど、私は耳まで真っ赤になっていた。
 それをわかっていて、レオが声もなく笑う。その気配を察して、私は頬を膨らませながら必死になって課題に意識を向けた。
伏せる