雲晴夏木の独り言

#人外と人間 で100日かけて100本の掌編書き切るぞの企画18日目!

Day.18 絵の中の門

 私の部屋には、薔薇が見事な庭を描いた風景画が飾られている。小さい頃から気に入っていたその絵には鉄製の門が描かれていて、それはいつも閉じていた。
 ある日のこと。窓も開けていないのに風を感じた。どこから吹く風だろうと部屋を見渡して、絵の中から風が吹いていることに気づいた。風は冷たく、鉄錆と薔薇の匂いがした。
 風が吹くのは絵の中、それも、門の向こうからだった。そして門は、大きく開かれていた。
 門の向こうには広大な〈空のない庭〉が広がっており、その向こうにある大地には何かが横たわっている。
 絵の中の何かが、ほんの少しだけ動く。門から吹き出していた風が、今度は門の向こうへと吸い込まれる。私の存在に気づいたかのように、振り向こうとするかのようにそれは身動いで――。
「見ないほうがいい」
 そう言って、レオが私の目を塞ぐ。私はレオの手に自分の手を重ねながら問いかける。
「あれは、寝てるの?」
「ああ。まどろんでいるんだ」
「目を覚ましたら、どうなるのかな……」
「だから絵に閉じ込めたのさ」
 門の閉まる音がして、風が止む。レオの手がゆっくりと離れた。
 物が見えるようになった目で絵を見る。風景画はいつも通り、薔薇を見事に咲き誇らせ、鉄の門はしっかりと閉じていた。さっきまで見ていたものが、まるで夢のよう。
 けれど部屋に残った鉄錆と薔薇の匂いが、夢ではないと語っていた。伏せる