雲晴夏木の独り言

#人外と人間 で100日かけて100本の掌編を書こう企画その17!

Day.17 あのときの言葉

 棘のように心に刺さり続けている言葉がある。
「あなたってほんと冷たいのね、ミーナ!」
 従姉妹のエルケが、祖父の葬儀に放った言葉だ。あんなにも可愛がってくれた祖父の死で泣かなかった私は、確かに冷たい。
「ねえレオ」
 自室で勉強中、どうしてもエルケの言葉が離れず、レオを呼ぶ。レオは音も立てず現れ「何だい?」と尋ねる。私はゆっくり言葉を探した。
「あなたが私を守るのは……というか……私が人じゃないものに好かれて、いろいろと変な目に遭うのは、私が冷たいから?」
「冷たい? きみが? 何を言ってるんだ、ミーナ」
「だって、あんなに大好きだったおじいさまが死んでも、涙一つこぼさなかったんだもの」
「ああ、それか……。それは、それはね、ミーナ」
 レオは動揺したようで、いつもより尻尾の振り幅が大きい。私がレオを見上げていると、レオは「おいで」と私をベッドへ移動させた。二人でベッドに腰をかけても、ベッドは私の体重しか感知しない。
「ミーナ、一つ言っておこう。きみは冷たくはない。むしろ優しすぎる」
「優しくない。誰かとの約束も忘れて放り出しちゃうような子だもの」
「いいや、優しい。きみがあの時泣かなかったのは、大好きな祖父を失った喪失感と、その非日常感がきみの感情を抑えつけたせいだ」
 レオは私の肩を抱き、髪を梳き、私に「きみは優しい」と言い続ける。その言葉のお陰で胸に刺さった棘が溶け落ちたような気がして、それと同時に今まで押しとどめられていた涙があふれ出した。レオが「いい子だ」「優しい子だ」と何度も言い続ける。
 私は静かにそれを受け入れ、レオの三つ揃いを涙で濡らしていた。伏せる