雲晴夏木の独り言

#人外と人間 で100日かけて100本の掌編を書くぞうの企画15日目!

Day.15. 烏の視線

 学校帰りの午後のこと。空は高く澄み渡り、風は涼しい。歩いていて心地よい気候だった。
 そんな心地よさの中、ふと違和感に気づく。
 道の先の街灯、そのてっぺんに、一羽の烏がいた。動かず、鳴かず、じっと私を見ている。
「気づいたかい?」
 煙のように姿を現したレオが笑う。その口ぶりからして、随分前から私を見ていたのだろう。
「君に気づいてほしいんだろう。今日はやけにわかりやすい場所にいる」
 レオによれば、その烏は()()()()だという。魔道書に触れた者を観察する存在。何かしらの判断も下さない、干渉もしない、けれど決して逃がさない。
「何のために私を見張るの?」
「さてね。魔道書を書いた誰かが、使用者の行く末を見たいのかもしれない」
 烏は私たちがどれだけ歩いても同じ距離でついてきた。どの角を曲がっても、先回りして街灯の上に佇んでいた。
 遠回りをしたせいで夕暮れが近づき、空が赤く染まりだす。私は烏を見やり、ため息のように呟いた。
「何だか不気味」
「仕方ない。きみはあの本を開いたからね」
 レオの言葉に一度足を止め、自分の影、街灯の影、そして烏の影に目を落とす。影は動かない。動かない私を、烏は今もじっと見つめている。
「……見られてるだけ。それなら何も起こらない」
 顔を上げ、私は再び歩き出した。
「寒くなってきちゃった。帰ったら紅茶でも飲もうかな」
「それはいい。クッキーもあればなおいいけれど」
「レオも紅茶を?」
「おや、わたしには出してくれないつもりだったのか?」
 歩き出した私たちの後ろで、静かな羽音が聞こえた。けれど私はもう、振り返らなかった。伏せる