雲晴夏木の独り言

#人外と人間 の100日で100本掌編書くぞ企画その11。

Day.11. 白猫と踊る

 小さい頃、白猫が庭に棲みついたことがある。いつからか姿を見せなくなったけれど、青い瞳が綺麗な猫だった。名前はパール。野良と思えない白い毛並みから、母がそう呼んだのが始まりだった。
 なぜこんな昔話をしているかというと、今私は夢を見ているからだ。パールそっくりの猫……の頭を持った王子様が、恭しく私の前で膝をつき、ダンスに誘う夢。
「僕と踊ってくれますか、ミーナ」
 夢を見ている、と直感でわかった。広いダンスホールにいるのは誰も彼も猫頭だったし、シャンデリアがくすくす笑いながら私たちを見下ろしていたからだ。
 夢だとわかっていたけれど、気づけば私の口は「はい」とうなずいていて、体はパールの白い手を取っていた。
 音楽に合わせて踊りながら、パールが喉を鳴らして笑う。
「ミーナ、ミーナ。きみはまだ忘れてるんだねぇ」
「あら。あなたも私に思い出させようとするの、パール?」
「いいや? 僕は忘れていたままのほうがいいと思うよ。思い出せないってことは、思い出さないほうがいいってことなんだからね」
「そうでしょ? そうよねぇ。なのにレオは、思い出させようと必死な気がする」
「悪魔ってそういうものさ。それよりもほら、今は僕とのダンスに集中して。夜はまだ長いんだから!」
 音楽ががらりと変わる。パールは私をぎゅっと抱き寄せ、くるりくるりとしなやかに回る。私はパールの足を踏まないようにするのが精一杯で、音楽を楽しむ余裕もなかった。
伏せる