雲晴夏木の独り言

#人外と人間 の100日100本掌編書くぞ企画

Day.3 祈り

 朝起きて身支度をする前と、夜寝る前、私は祈る。祈る相手は神様の時もあるし、産まれる前に死んでしまった祖母の時もあるし、つい最近死んでしまった祖父の時もある。
 ――今日も明日も何も起きませんように。静かに一日を過ごせますように。
 私は平和を愛している。私は静けさを愛している。静かで平穏であれば、それ以上は何も望まない。友達も、家族も、望まない。
「きみはいつも熱心に祈るね、ミーナ」
 おかしそうに笑いを堪え、レオが言う。お祈りをやめて振り向くと、いつもの三つ揃いに身を包んだレオがおかしそうに肩を揺らしていた。
「そんなに平穏が好きかい?」
「だって、静かで平和なのが一番だもの」
「つまらないだろうに、そんな人生」
「つまらなくていいの。悲しんだり怒ったりするのは、醜いから」
 思い出すのはまだ祖父が生きていて、私も幼かった頃。友達になる子が皆憑かれたように私に執着し争う姿。私から離れれば執着していたことすら忘れたあの顔。そして噂される『大魔術師の孫』の呼称。
「静かな生活があればそれでいい。私は静かに、穏やかに、誰も傷つけず傷つけられず過ごしたいから」
 そう言ってまた熱心に祈る私を見て、レオは楽しそう目を細めていた。
伏せる