雲晴夏木の独り言

「あ」
「なに?」
「オバケのオバケだ」

オバケのオバケ

「何それ」
「隠れなきゃ」
「引っ張らないで、お兄ちゃん」
「しー。静かに」
「押入れ? やだよ、怖いよ、汚いよ」
「見つかるよりマシだよ。よいしょ」
「オバケのオバケって何なの? 押入れに入んなきゃいけないくらい怖いの?」
「そうだよ。じーちゃんが言ってた。オバケのオバケに見つかると食われるぞって」
「これだからじーちゃんちに来るのやだったのに」
「大丈夫、見つからなければどこかに行くよ」
「見つかったらどうなるの?」
「食べられちゃう」
「オバケなのに?」
「オバケのオバケだよ」
「だからそれって何なの?」
「オバケのオバケはね、昔、悪いオバケだったんだ。だからじーちゃんのじーちゃんの、そのまたじーちゃんが退治したんだよ」
「でもまだいるよ」
「うん。退治されたのを恨んで、オバケのオバケになったんだ」
「お兄ちゃん、オバケが何か探してるみたいだよ」
「じーちゃんのじーちゃんのそのまたじーちゃんの子孫、つまり僕らを探してるんじゃないかな。じーちゃんたちは寄り合いに出てるし、父さんたちは仕事だから」
「押入れにいたら見つかっちゃうよ、外に出ようよ」
「大丈夫、じーちゃんがお札を貼ってくれてるはずだよ」
「それってこれ?」
「うん」
「破れてる」
「古かったみたいだね」
「お兄ちゃん」
「あ」
*どたどた走ってくる足音*
「見つかった」
*バタン、と閉まる音*伏せる


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