逢魔が時に萌ゆる少女の恋草

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標準語edition

 テスト明けの放課後のこと。私と友人数人は、県道に面した有名ファストフード点で塩気と甘みに舌鼓を打っていた。テスト勉強から解放された喜びから私たちの舌は滑らかに動き、世間話や愚痴に花を咲かせていた。  みんな夢中になっていたかと思いきや、どこか冷静なところはあったようで。

「弟たちの面倒見なきゃいけないから」 「塾の時間だから」

 と言って次々に席を立ち、残ったのは|暮加田《くれかた》|愛理《あいり》と私だけになった。それでも私と愛理は、おしゃべりの花を枯らせることはなかった。  さて話のきっかけは何だったか。塾の時間だからと帰ったあの友人に彼氏ができたからか、担任がはにかみながら婚約指輪を見せてくれたことを思い出したからか。ともかく何だか拗ねた気分になった私は、残り少ないジュースを吸いながら「自分でも恋バナしたいもんだわ」とぼやいた。  正面に座ってシェイクを飲んでいた愛理が、ふわふわの巻き毛を揺らして首を傾げた。素で長い睫毛で縁取られたアーモンド型の目が、嬉しそうに細くなる。

「じゃあ、私の初恋でも話そっか」

 ピンクの唇を三日月形にして「んふふ」と笑った愛理は、求めてもない愛理なりの淡い初恋を語り始めた。

***

 空は真っ赤に燃え上がっていて、なのに薄暗い夕暮れ。黄昏時とも逢魔が時とも呼ばれるそんな時間、まだ小学生だった愛理は、男と手を繋いで静かな住宅地を歩いていた。  男はしきりに愛理に話しかけていたが、当の愛理は上の空。時々手を振り払おうとむずがるくらいで、男に対し反応を示さない。  男はそんな愛理を愛しげに見つめるものの、決して手は離さなかった。むしろ、愛理が嫌がって手を振るたびにがっしりと握り直していた。  愛理の父と呼ぶには、男は若かった。年の離れた兄と思えば見えなくもないが、愛理は四人姉妹の末っ子だ。親戚に男と同じ年頃のいとこはいるが、近くには住んでいない。  男は、赤の他人だった。赤の他人に手を掴まれながら、愛理は声も上げず大人しく歩いている。愛理の目は、男ではなく近づく十字路を一心に見つめている。十字路の向こうには、背の高い人影があった。進むでもなく戻るでもなく、ぼんやりと十字路の真ん中で立っている。どうやら愛理の頭は、あの人影で占められているようだ。  逃げることを諦めた愛理は、もう数メートルまで迫った十字路を見つめ「あのね」と口を開いた。

「夕方の、真っ赤な時間にね、四つ角に行ったらだめなんだって」

 唐突な愛理の話をどう思ったのか、男は訝しげに顔を歪めたものの、すぐに穏やかな声で「どうして?」と尋ねた。鈴の転がるような愛らしい声で、愛理は十字路に入ってはいけない理由を答えた。

「四つ角にはね、辻曲さんがいるの」 「つじまがりさん?」

 男の声に、愛理がこくんとうなずく。白い頬に夕日を反射させながら、愛理は最近小学校で語られる怪異について話した。

「夕方になってもおうちに帰らない悪い子は、辻曲さんに連れてかれちゃうの」

 目と鼻の先まで迫った十字路は、塀代わりに植えられた樹木や、木製の塀、コンクリート塀で仕切られた何の変哲もないものだ。住宅地だからか、こんな時間だからか、車が通る気配はない。誰かが歩いてくる気配も、家から出てくる気配もない。  なのに人影だけは、ゆらり、ゆらりと揺れながら佇んでいる。こちらへ近づくでもなく、遠ざかるでもなく、じっと、じぃっと愛理と男を見つめている。  血縁関係に見えない子供を連れている自分を見られても、男は気にしないらしい。一度ちらりと人影を見やっただけで、男は「そうなんだ」とうなずき、愛理と繋いでいない手で「でも大丈夫」と胸を叩いた。

「僕がおうちに連れてってあげるよ」

 男の足が十字路手前の停止線を踏む。人影と愛理たちの距離は互いの顔が視認できるほどだ。なのに、人影は真っ黒で顔も見えない。  ここで初めて、愛理は抵抗した。ぴたと立ち止まり、男をつんのめらせる。

「わたしのおうち、こっちじゃないよ」

 立ち止まった愛理は、これ以上一緒に歩くことを拒否した。男は人影を見やり、猫なで声で「大丈夫」と繰り返して愛理に再び歩かせようとする。

「大丈夫だからおいで。つむじまがりさんとやらが来ても、僕が守ってあげるから」 「いや。やだ。おじさん、手、離して」 「いいから、おいでって」

 男は強く手を引き、愛理の足に停止線を踏み越えさせた。その瞬間だ。落ち着いた声で、おっとりと間延びした口調が聞こえたのは。

「おうちに帰らない、悪い子を連れてるのは、だぁれ?」

 声は男の真後ろから聞こえていた。「あ?」と声を漏らした男が振り向くと、真っ黒な人影が鼻先の触れそうな距離にいた。  男に手を掴まれたままの愛理が叫ぶ。

「この人が、私を帰してくれないの!」 「そうか。悪い子は、こっちだったか」

 うなずいた人影は、夕日のように真っ赤な口を大きく開けた。大きく大きく開いた口は男の頭を簡単に飲み込む。飲み込まれた男はこれ以上飲まれまいと、愛理の手を離し抵抗する。けれど人影は成人男性の抵抗を意にも介さず、ゆっくりと男を飲み込んだ。  歪に膨らんだ影が、もぞもぞと動く。口の中に入れた男を咀嚼しているようだ。男の古びたスニーカーだけが、ぽとりと地面に落ちている。愛理は丸い目をさらにまん丸に見開いて、男を飲み込んだ怪異を見上げていた。  やがて愛理は、ぽつりと海尉の名を呼んだ。

「辻曲さん」

 喉を鳴らして男を飲み込んだ怪異は、「そうだよ」と落ち着いた声で応えた。歪に膨らんでいた輪郭は、すっかり元の細長い影に戻っていた。

「おうちに帰らない悪い子は、辻曲さんが、食べちゃうよ」 「わたしのこと、食べちゃうの?」 「きみは、おうちに帰らない、悪い子?」

 相変わらず真っ黒な人影の問いに、愛理は慌てて「ううん」と首を振った。

「帰りたいのに、あのおじさん、離してくれなかったの」 「それじゃあ、おいで」

 今まで見たどんな影よりも濃い黒が、愛理に差し出される。今し方成人男性を咀嚼し飲み込んだ恐ろしい怪異だというのに、愛理は其の手を掴むのに、何の躊躇も感じなかった。  〝辻曲さん〟と呼ばれる怪異の真っ黒な手に引かれ、愛理はいくつもの辻を歩いた。一つ、二つと数えていたが、いくつもいくつも曲がるうちに、愛理は今自分がいくつめの辻に来たかわからなくなった。  それでも怪異には、愛理をきちんと家まで送るつもりがあったらしい。気づけば愛理は、家の近くの四つ角に立っていた。  これまでずっと愛理と同じ歩幅で歩いていた怪異が、立ち止まって愛理を見下ろす。

「ここからなら、帰れるね?」

 愛理は目を輝かせ「帰れる!」とうなずき、笑顔で怪異を見上げた。

「ありがとう、辻曲さん」 「きみはいい子だから、帰らせてあげる」

 怪異はここで声を潜め、「でもね」と異様な長身を曲げて愛理と顔を合わせた。鼻を突き合わせるほどの距離にあっても、怪異の顔は見えない。

「きみが、おうちに帰らない悪い子になったら、連れてくからね」

 気づくと辺りは真っ暗で、逢魔が時を過ぎた夜更けになっていた。十字路の真ん中で立ち尽くす愛理を、眩しい光がちかっと照らす。それは懐中電灯を握り締めた両親だった。青ざめた顔の二人が、愛理を見つけすぐさま駆け寄る。

「こんな時間まで、どこに行ってたの!」 「怪我はしてないか? 誰かに連れ回されたのか?」

 抱きしめ怪我を確かめる両親に、愛理は先ほど怪異と歩いたであろう方角を指さした。

「知らないおじさんに連れてかれそうになったけど、辻曲さんが送ってくれたの」

 誰もいない十字路を指さす愛理に、両親は怪訝そうな顔をするだけだった。

***

 ――と、ここまでが愛理の語る〝初恋〟の話だ。語り終えた愛理が、夕日のせいだけではない赤みを持った頬に両手を添える。私は渋い顔でストローをがじがじと噛んでいたが、愛理は気づかない。気づかずに、今現在の〝|性癖《ヘキ》〟を語る。

「それからなの、あんな風に背が高くて落ち着いた声で墨みたいに真っ黒な人じゃないとだめになっちゃったのは」

 いやいや……と私はストローから口を離した。

「恋バナじゃなくて、業の深い話じゃないすかぁ……。どこが淡いのよそれ」 「はあ? きっちり胸キュン初恋ストーリーですけどぉ⁉」

 辻曲さんは都市伝説だ。小学校高学年のときにはもう、この一帯で知らない子供はいないほど広まっていた。発祥はどこだっただろう。最初によく聞いたのは、愛理が通った小学校近辺だった気がする。あの辺は不審者も多い場所だった。愛理の話は勘違い、もしくは記憶の改ざんと受け取れなくもない。だけど――。  頬を膨らませ唇を尖らせ怒る愛理から目を逸らし、いつのまにか真っ赤になっていた窓の外に目をやる。  窓の外は県道に面した歩道だ。ちょうど目の前が横断歩道で、こちらにも向こうにも電柱がある。そこに、人影があった。  墨を垂らしたように真っ黒いで、異様に背が高くて、顔の見えない人影だ。人影は電柱の影から一心に愛理を見ている――と、なぜだかわかった。心なしか、恥じらっているようにも見える。  綺麗な表現を用いるならば、恋い慕っている相手をひっそり見つめてるウブな青年と表すのがふさわしい。表現を選ばなければ、ストーカーが対象を見つめる様に似ている。  その人影は、私と愛理が二人きりになった頃から立っていた。愛理が出てくるまでずっと待っているつもりだろうか。  怪しい人影から目を逸らし、ストローを噛みながら「いやいやいや」と呟く。

「どっちも満更じゃないのかよぉ……怖ぁ……」 「え? なに?」 「何でもなぁい」

 犬も食わんでしょうよとぼやき、私は水と化したジュースを飲み干した。

関西訛りedition

 テスト明けの放課後、ファストフード店でのこと。私と友人数人は窓辺の席を陣取り、塩気と甘みのバランスに舌鼓を打ちながらおしゃべりの花を咲かせていた。  時間も忘れ夢中になっていたつもりだが、友人たちはどこか冷静な部分もあった模様。塾があるから。弟たちの世話があるから、と理由を述べて一人二人と抜けてゆく、空が真っ赤になる頃には、私と|暮加田《くれかた》愛理の二人きりになっていた。  話の流れは何だったか。友人に彼氏ができたからだったか、担任に婚約者ができたからだったか。自分から恋バナとかしてみたいわ、とぼやいたのが原因だったか。  甘ったるいシェイクを飲んでいた愛理がふわふわの巻き毛を揺らし首を傾げた。そしてピンクの唇でにまっと笑ったかと思うと、「あたしが小学生んときまで戻るんやけど」と話し出した。

 ***

 空は真っ赤に燃え上がって、けれどぼんやり薄暗い。黄昏時と呼べる時間、小学生の愛理は男と手を繋いで住宅地を歩いていた。  男はしきりに愛理に話しかけるが、愛理は上の空で返事もしない。時々、男の手から自分の手を抜こうとむずがる。男はそれを愛しげに見つめるものの、決して愛理の手を離しはしない。愛理が離れようとする度にしっかり手を繋ぎ治している。  男は愛理の父親ではない。父親にしては若いが、兄というには年が離れている。愛理は末っ子だが、兄はいない。親戚にこの年頃の青年はいるが、この近くに住んでいない。  男は赤の他人だ。赤の他人が、小学生の愛理の手を掴んで離さない。叫べば助けが来るかもしれないが、愛理はまだ、そこまでの危機感を男に対して持っていなかった。すぐそばの不審者よりも恐ろしいものが、愛理の頭を占めていた。  手を抜こうとしてはがっちりと繋ぎ直されるやり取りを、何度繰り返したか。繋がれた手から逃げるのを諦めた愛理は、だらりと手を下げ「あんなぁ」と口を開いた。

「夕方の、真っ赤な時間になぁ、四つ角に行ったらあかんのよ」

 愛理の唐突な発言を、男はどう思ったのか。一瞬訝しげに愛理を見下ろしたものの、すぐ穏やかな声で「どうして?」と尋ねた。白い頬は夕日のせいでほんのり色づいている。ふっくらした唇を尖らせ、愛理はもうすぐそこに近づく十字路を指さした。  植えられた樹木の塀がそれぞれの土地を主張し合う十字路。その向こうに、ぼんやりと黒い人影があった。男は自分と愛理の姿がどう見えるか気にしないようで、愛理と手を繋いだまま、歩調を緩めず十字路に向かって歩いてく。愛理も並んで歩きながら、男から人影へ目を移す。

「四つ角になぁ、辻曲さんがおんねんて。あやちゃんが言うてたん」 「つじまがりさん? 誰だい、それ」 「夕方、家に帰らん悪い子ぉは、辻曲さんに連れてかれてまうんやって。わたし、連れてかれるんいやや」

「そうなんだ」とうなずいた男は、「でも大丈夫」と空いた片手で胸を叩いた。

「僕がおうちに連れてったげるから、怖くないよ」 「おうちて、あたしの家、こっちちゃうよ」 「大丈夫。大丈夫だからおいで」

 男の足が十字路に踏み込む。愛理はそこで初めて「いやや」と言って抵抗した。何が何でもそれ以上進まないと足を踏ん張り、首を振って後ろへ下がろうとする。

「おっちゃん、手ぇ離して」 「いいからおいでってば」

 愛理が持てる力を振り絞っても、成人男性の力に勝るはずもない。十字路に背を向け、男は両手で愛理を引っ張った。抵抗する愛理はずるずると引きずられ、ピンクの靴を履いた足が十字路に入ってしまった。そのときだ。

「おうちに帰らない、悪い子、見つけ」

 間延びした口調の、けれど落ち着いて耳心地の良い声が、男の向こうから聞こえた。長い長い黒い影が男と愛理を包む。男が「ああ?」と声を漏らし振り向いたときには、大きな大きな赤い口が、男の頭を飲み込んでいた。  夕焼けのように赤い口の中へ、男の体が飲み込まれていく。真っ黒な影の輪郭が、もごもごと動く。飲み込んだ男を咀嚼しているような動きだ。愛理はぽかんとして、大きな黒い影が男を飲み込むまでじっと見ていた。

「辻曲さん」

 愛理がぽつりと呟くのと同時に、黒い影はごくりと男を飲み込んだ。愛理の前に残ったのは、飲み込み損ねた男の古びたスニーカーと、異様に背の高い真っ黒な人影だけだ。  落ち着いた声が、ゆったりと愛理に話しかける。

「悪い子は、辻曲さんが、食べちゃうよ」 「あたしも食べられてまうん?」 「きみは、おうちに帰らない、悪い子?」 「ううん。帰りたい。帰りたいのに、おっちゃん、手ぇ離してくれんかった」

 愛理の訴えに、人影――辻曲さんはうんうんとうなずいた。

「帰りたいんだね。いい子だね。それじゃあ、おいで」

 辻曲さんの真っ黒な手が、愛理に差し出される。ついさっきまで不審者に手を握られていた愛理だが、不思議と辻曲さんの手に不快感を示すことはなかった。ためらいなく握った漆黒の手は、すべすべと滑らかで、少しひんやりしていた。  辻曲さんの影より黒い手に導かれ、愛理はいくつもの辻を曲がった。一つ、二つ、三つ。数え切れないほどの辻を越えたとき、見慣れた四つ角に辿り着いた。愛理の家からすぐそばの十字路だ。  愛理が「わぁ」と喜ぶと、辻曲さんはゆっくり手を離した。

「ここからなら、帰れるね?」 「帰れる! ありがとう、辻曲さん」 「きみはいい子だから、帰らせてあげる」

 背中を大きく曲げた辻曲さんが、でも、と愛理の顔を覗き込んだ。

「おうちに帰らない悪い子になったら、連れてくからね」

 真っ黒な顔の向こうに、愛理は自分を見つめる目を見た――ような、気がした。気づくと辺りは真っ暗で、愛理は一人、十字路に佇んでいた。懐中電灯を持った両親が、青ざめた顔で愛理に駆け寄る。

「愛理、ああよかった、攫われたか思たわ!」 「ほんまにもう、こんな時間までどこ行ってたん!」

 両親に抱きしめられ、叱られながら、愛理は「あんな」と先ほどの出来事を語った。

「知らんおっちゃんに、手ぇ掴まれてん。でもな、でもな、辻曲さんが一緒に帰ってくれたん」

「つじまがりさん?」と両親が首を傾げる。愛理はこくんとうなずいて、もう誰もいない十字路を指差して「辻曲さん」と繰り返した。

***

 ――と、ホラーにしか聞こえない話を語り終えた愛理は、「それからなんよ」と言って淡く染まった頬に両手を添えた。

「あたしなぁ、あんくらいのっぽで、声が落ち着いとって、真っ黒けな人やないとあかんようになってん」 「……いやっ、今の話でそうなるかぁ?」

 動揺して声が裏返る。水っぽいどころかほぼ水となったジュースを飲む。  辻曲さん。私が小学校高学年くらいの頃から流行りだした話だ。今や都市伝説としてこの地域では有名になっている。  恋バナをしてみたいと言って、なぜ怖バナを聞かされるのか。解せぬ、解せぬぞと氷を噛み砕くほかない。私の渋い顔を見て、愛理が「何なん?」と頬を膨らませる。

「そっちが恋バナしよー言うたやん」 「いや、恋バナか今の? どっちか言うたら怖バナやん。恋バナやとしても業の深い恋バナやん……」 「業なんか深ないもん」

 むくれる愛理から目を逸らし、窓の向こうへ目をやる。  先ほどから、輪郭しかわからないくらい真っ黒な人影が視界に入っていた。愛理の言うように、異様に背の高い人影だ。人影は店の外、道を渡ったその向こう、電柱の陰からこちらを窺っている。真っ黒なのに、愛理を一心に見ているとわかった。心なしか恥じらっているようにも見える。  あれが噂の辻曲さんだろうか。そうだとしたら――と私は氷を噛んだ。

「あっちも満更じゃないんかい」 「ええ? なに?」 「何でもなぁい」

 つい漏れてしまったツッコミを誤魔化して、私はすっかり水になったジュースを飲み干した。