神が死んだ。母は家中あちこち歩き回った。「気配はあるのにいない」「どこにもいない」「どこにいるの」と母は嘆き悲しんだ。あげく家から出て神を探しに行こうとするものだから、慌てた奴隷が何度も母を止めた。奴隷に羽交い締めにされながら、母は神を求め名を呼び、叫び、暴れ疲れては神の遺品に包まり眠った。神の匂いに抱かれ眠る母は、夢の中でも切なげに神の名を呼んでいた。 うろうろ。うろうろ。 神を探し、母はあちこち歩き回る。あんまり悲しげに泣くものだから、奴隷は母を気遣い、毎日の散歩の時間を延ばしたほど。帰ってきた母に神はいたかと尋ねなくても、しょげかえった様子を見れば答えはわかった。元気のない母を見送り、奴隷が言う。
「ハナコってば、じーちゃんが死んでから元気がないなぁ。お前も励ましてやってくれよ、タマ」
奴隷が私のノドをくすぐる。私は喉を鳴らしうなずいた。 ええ、いいわ。励ましてあげるわ。そして教えてあげるの。こいつらは神じゃない。私こそが神なの。だからお母さん、あなたは悲しまなくていいのよ。神はここに、あなたの新たな神はここにいるのだから。